中小企業倒産防止共済(R6.10.1以後契約分の解約・再加入は注意です!)
皆さま、中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)をご存じでしょうか。
これは「取引先事業者の倒産の影響を受けて中小企業が倒産する事態(連鎖倒産)又は、倒産に至らないまでも著しい経営難に陥る事態の発生を防止するため、中小企業者の相互扶助の精神に基づき、中小企業者の拠出による共済制度を確立することによって、中小企業の経営の安定に寄与することを目的とする」制度です。(中小企業倒産防止共済制度 契約申込書より)
この制度のポイントは、
1 無担保・無保証人で、掛金の10倍まで借入れ可能
共済金貸付額の上限は「回収困難となった売掛金債権等の額」か「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」の、いずれか少ないほうの金額となります。
2 取引先が倒産後、借入れできる
取引先の事業者が倒産し、売掛金などの回収が困難になったときは、その事業者との取引の確認が済み次第、借り入れることができます。
3 掛金を損金、または必要経費に算入できる
掛金月額は5,000円~20万円まで自由に選べ、増額・減額できます。また確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または必要経費(個人事業主の場合)に算入できます。
4 解約手当金が受けとれる
自己都合の解約であっても、掛金を12か月以上納めていれば掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば、掛金全額が戻ります(12か月未満は掛け捨てとなります)。
(中小企業基盤整備機構のホームページより。詳しくは経営セーフティ共済とは | 共済制度 | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 (smrj.go.jp))
以上のことから、中小企業には非常にありがたい制度ですので、すでに加入されている、もしくは過去に加入していた事業者様も多くいらっしゃるかと思います。掛金が自由に変更でき、全額を損金・必要経費として算入できるということで、節税対策としてこの制度に加入する事業者様や、解約後の再加入も可能であるため、「解約手当金の支給率が100%になれば解約し、すぐに再加入」を繰り返している事業者様もいらっしゃるかもしれません。
上限掛金月額20万円を年払いで納めると(掛金を前納することが可能)、それだけで240万円の損金・必要経費になります。しかし、注意が必要です。積み立てられる掛金は上限800万円までです。掛金総額が800万円に達すると、掛金の請求は停止されます。また、一部解約は認められていませんので、解約すると解約手当金を一度に全額受け取ることになります。解約手当金として800万円を受け取る場合は、益金・事業所得が800万円計上されることになるので、解約時期も含め、出口対策を考えなければなりません。
役員退職金や建物の改装などの大きな支出に充てたり、赤字を抑えるために解約するなど…。
さらに重要なことが!
令和6年度税制改正大綱により、令和6年 10 月1日以後の共済契約の解除について、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については、「掛金を損金・必要経費に算入できる」という特例の適用ができないこととなりました。つまり、解約後すぐの再加入は可能であるものの、解約後の2年間については掛金を損金・必要経費に算入することができなくなります。
中小企業倒産防止共済は冒頭にもあるように「中小企業の経営の安定に寄与することを目的」としているため、「短期間で繰り返される脱退・再加入は、積立額の変動により貸付可能額も変動することとなり、連鎖倒産への備えが不安定となるため、本来の制度利用に基づく行動ではない」という理由からのようです。
とてもメジャーで役立つ共済制度ではありますが、その目的を念頭に置いて活用していかなければなりません。